下総の細道(Life Is Like A Phantom)

百代の過客は月日にして行き来う年もまた旅人なり

イワシと気候変動

 図書館で偶然見つけた本です。著者は東北大学の農学博士です。

   

 気候変動に関してややIPCC寄りな部分を除いては、海洋水産資源について「レジーム・シフト」と呼ばれる現象を、長年にわたり精密に日本が研究してきたことが判り、なかなか面白く、興味深い本でした。

 1950年代に始まる乱獲に基づく漁獲高減少と言う、一般的に単純で判り易い「平衡理論」と呼ばれる主張をイギリス人がしたことで、海洋資源保護と言う概念が世界的に展開され、世間が未だに誤解したままでいることは、目から鱗でした。(だからと言って、乱獲と漁獲高減少とに因果関係が無いと言う訳ではありませんが、その辺は誤解の無きよう。)

 特に後半は、アメリカ発の海洋資源保護の主張の誤りを指摘していて、まぐろが取れなくなっていると言う話と温暖化の話とは、科学が政治に利用された典型的な例であることが良く判ります。もっとも、WWFが鯨の保護を訴える論法と同じ論理だと思いました。

 レジーム・シフトと何十年と掛けて巡回する海流と、エルニーニョラニーニャ現象と深い関係があるわけですが、その肝心な地球の気象現象はまだまだ謎が一杯あることを忘れてはいけないと改めて思いました。