下総の細道(Life Is Like A Phantom)

百代の過客は月日にして行き来う年もまた旅人なり

新渡戸稲造

 たまたまうちにあった漫画を読んだ後に、現代語訳版を図書館で借りて読んでみました。

 そもそも、五千円札にもなった新渡戸稲造自体を良く知らなかったのですが、明治の時代に日本の道徳の根幹を説明した本として世界的に有名になった本だそうです。日本人として知らなかったのが恥ずかしいぐらいです。しかもなんと原文は英語だそうで、英文も併記した文庫本も出ています。

 

 第二次大戦後、軍国主義への反感と歪んだ民主主義教育とから、道徳教育と言うとすっかり忘れ去られた感じがありますが、あの大震災で世界から評価された被災地の冷静さは、武士道精神が根本にはまだ残っていたからではないかと思われます。

 70年代のイデオロギー闘争の折には、右翼的な思想と嫌われた本ではないかと思いますが、日本人が忘れかけている大切な心が刻まれている気がします。「忠義」とか出てくるので、戦前の履き違えた軍国教育を受けた人々から、忌み嫌われるのかもしれません。

 もっとも、このような道徳観がガラパゴス化や内向きな日本人の根幹になっている、と言う議論もあるとは思いますが。そう言う意味では、明治の時代に日本人としてアメリカでこの本を英語で書いていて、世界から評価されたのも意味深いと思います。